対話により可能性を引き出すコーチングにおいて、相手に気持ちよく話してもらうコミュニケーションスキルは、基本的かつ重要なスキルです。
今回は、コーチングで使われる基本的なコミュニケーションのコツを紹介します。
とくにコーチングを仕事にしていない人でも、いくつかのコツを知って活用することで、周囲の人とうまく信頼関係を築いたり、コミュニケーションミスによる日常のちょっとしたストレスから解放されるきっかけになるでしょう。
もくじ
まずはしっかり認めること
相手を尊重する姿勢
安心して話してもらえる環境は、良質なコミュニケーションの大前提になります。
そのためには、相手を尊重する姿勢を示して、心理的安全性を感じてもらう必要があります。
心理的安全性とは、何を話しても大丈夫と思えるような安心感のこと。
Googleがチームのパフォーマンスを最大化するための重要事項として取り上げたことでも有名です。
何か言ったら言い返されるんじゃないか、くだらないと思われるんじゃないか、といったような不安があると、本音で深い話をするのは難しいものです。
たとえ相手が部下であっても、あるいは子どもであっても、関係性は上下ではなく対等であることを意識し、ひとりの人間として相手を尊重することがスタートラインです。
受け止める
相手の考えは相手のもの。
自分の考えと切り離す意識を持つことで、たとえ自分と違う意見であっても、相手の考えを尊重して認めやすくなります。
また、聞き上手な人は、相手の感情に寄り添うのが上手ですね。
このような「共感」も、話を引き出すうえで重要ですが、「共感」と「同意」は別のものです。
この二つを区別しておくと、たとえ納得し難い話でも受け止めることができるようになります。
とはいえ、相手の言ったことをそのまま受け止めるのはなかなか難しいものです。
人はそれぞれ自分の判断基準があり、それに基づいてジャッジすることでスムーズに情報を処理しているからです。
これは効率的なコミュニケーションには役立つ能力なのですが、相手の価値観に寄り添ってしっかり受け止めるためには、自分のジャッジに蓋をした方がいいでしょう。
「あ、いまジャッジしてるな」ということに自分で気づくことができれば、コントロールするのは難しくありません。
相手の発言に対して批判やアドバイスが浮かんでウズウズしてきたら、受け止めきれていないサインです。
普段の会話の中でちょっと意識してみると、自分の考え方のクセを客観視できて、必要なときにコントロールしやすくなるでしょう。
積極的に聴く
アクティブリスニング(積極的傾聴)
聴覚は音を受け取る受動的なものですが、コーチングでの聴きかたは、より能動的なものです。
相手の話す言葉はもちろん、言葉以外の情報、例えば表情やしぐさ、声のトーンの変化にも気を配って聴きます。
また、自分の話の聴き方が相手に与える影響を意識することも重要です。
リアクションがそっけなかったり、集中してなさそうな素振りが見えると、相手の話す気を削いでしまいます。
傾聴のテクニック
積極的に聴くため、あるいは聴いていることを示すため、いくつかテクニックがあります。
- うなずき、アイコンタクト
コミュニケーションでは言葉のみならず非言語の要素も重要。 - リフレイン
相手の言葉をピックアップして繰り返すことで、興味を持って聴いていることが伝わる。 - ペーシング
話す速度やトーン、しぐさを合わせることで話しやすい雰囲気が生まれる。 - 要約、言い換え
こちらの理解を示すとともに、相手の真意を確認することもできる。
このようなテクニックを意識することはスムーズなコミュニケーションに役立ちますが、表面的なリアクションだけにならないように気をつけましょう。
形ばかりのリアクションは相手に伝わるものです。
前述の「相手を尊重する姿勢」がベースにあってのテクニックであるということを、忘れないようにしたいところです。
沈黙を恐れない
沈黙が苦手、という人が結構います。
会話の最中に間が開くと、耐えきれずこちらからいろいろ話したくなりますが、ここはグッとこらえましょう。
相手はその沈黙の間に、考えをめぐらせて言葉を選んでいるのです。
その時間を尊重して待つことも、話を引き出すうえで必要なスキルです。
引き出すための質問
クローズドクエスチョンとオープンクエスチョン
yes/noで答えられるものがクローズドクエスチョン。話の方向性を絞っていくのに便利です。
一方で話を広げていきたい場合は、相手が自分の言葉で回答できるオープンクエスチョンが有効です。
具体的には、「何を?」「どのような?」「どうやって?」のように、5W1Hの疑問詞で投げかける質問です。
ただし、whyは使い過ぎると相手を詰めている感じになってしまうので、気をつけてください。
チャンクダウンとスライドアウト
相手の話した内容を汲み取り、そのテーマをより分解していくチャンクダウン。
「具体的には?」と深掘りしていきます。
一方、スライドアウトは、他の選択肢を引き出す質問です。「他には?」と聞いてみましょう。
何度も「他には?」と聞かれるとややめんどくさく感じるかもしれませんが、思考の枠を広げるきっかけとして有効なアプローチです。
興味、関心を持つ
上述のような「質問の型」を意識しつつも、スムーズにいろいろ引き出すためには相手に興味、関心を持つことが大事です。
この人のことをもっと知りたい、と思えば、自然にいろいろ聴き出したくなるものです。
なお、コーチングでは、コーチの情報収集のためではなく相手の気づきのための質問をします。
なので、コーチングセッションの中では、相手の過去の状態よりも、未来の可能性に強く関心を持って話を引き出すようにしています。
以上、コーチングで使われる基本的なコミュニケーションのコツをいくつか紹介しました。
ちょっと意識するだけでも効果を感じられると思いますので、身近な人や仕事上のコミュニケーションで参考にしてもらえると嬉しいです。